金属材料の種類と特徴。材料選定で軽量化やコストダウンを実現する方法とは?

設計の基礎

2020/06/02

金属材料は、金属の種類によって強度や特性が大きく異なります。そのため多くの場合、用途によって使うべき材料の種類を決めることになります。
一般的な材料選定の流れは、まず仕様にある硬度、密度の値をもとにして大まかに材料の見当をつけて設計します。次に引張強度などの値に基づいて強度計算を行い、最後に特性と流通量(入手性)を考慮して、利用する材料を決定するという順序になります。
この記事では、材料選定に役に立つ、金属材料の特性と、材料を選定する際に注意すべきポイントについて紹介します。

工業分野で利用される金属材料の種類と特徴


工業材料は金属材料非金属材料の2つに分かれ、金属材料はさらに鉄鋼非鉄金属に分かれます。
鉄鋼に分類されるのは、鋼、ステンレスなど。非鉄金属はアルミ、銅、チタンなどが分類されます。

続いてそれぞれの特徴をみていきましょう。

鉄鋼

日常において「鉄」という言葉はよく使われますが、工業分野において純粋な「鉄」が使用されることはほとんどありません。一般的に「鉄」と呼ばれているものの正体は鉄と炭素の合金である「鋼」です。鋼にさまざまな金属を添付したものが合金鋼で、クロムモリブデン鋼やステンレスも合金鋼の仲間です。

鋼の特徴は、安価で、切ったり削ったり引き延ばすなどさまざま加工が可能なことです。また熱処理によって性質が変化するのも特徴の1つです。一方で、条件によっては錆を生じるのが欠点です。

次に一般的に広く使われている鋼とステンレスを表にまとめました。

 

◆鋼

名称 材料記号 用途 特徴 引張強度(MPa)※目安 比重
一般構造用圧延鋼材 SS400 ボルト、ナット、機械の構造材、一般機械部品 加工性・溶接性が良い 400~510 7.85
機械構造用炭素鋼 S45C、S50C 540~570 7.71
クロムモリブデン鋼 SCM415、435、420 強度を要する一般機械部品、構造材 重量に対する強度が高い 980 7.85
高炭素クロム鋼 SUJ2 転がり軸受、ベアリング 高周波焼き入れにより高い硬度を得る 1570~1960 7.83
ばね鋼 SUP6、SUP7、SUP9 ばね、スプリング ばねに適した鋼 1230 7.85
熱間圧延鋼板 SPHC 一般機械、構造物 見た目が黒い板金 270(以上) 7.85
冷間圧延鋼板 SPCC 自動車や家電の外板、カバー、建材 表面が美しい板金 270(以上) 7.85

 

◆ステンレス

名称 材料記号 用途 特徴 引張強度(MPa)※目安 比重
オーステナイト系 SUS303 防さびが必要な機械部品
食品・科学設備、配管、タービン
切削性が良い。磁性を持たない 520 7.93
SUS304 最も一般的なステンレス鋼。磁性を持たない 7.93
SUS316 磁性を持たない。SUS304よりも耐食性に優れる 7.98
マルテンサイト系 SUS440C、SUS410 刃物、医療機器、タービン 磁性を持つ。焼き入れ可能で加工性が良い 1960 7.75

 

金属材料は、鋼板や丸棒、角鋼などさまざまな形状で供給されます。そのため「SS400の鋼板」や「S45Cの丸棒」のように、材料と供給形状を組み合わせて識別します。

しかし、高炭素クロム鋼は一般に丸棒のみの供給、熱間圧延鋼板や冷間圧延鋼板は板状のみでの供給になるなど、材料によっては供給形状が限られるものもあります。

非鉄金属

鉄ではない金属をまとめて非鉄金属といいます。非鉄金属には非常に多くの種類があり、特性によってグループ分けされています。工業分野で頻繁に使われる非鉄金属には次のようなものがあります。

・軽金属
アルミニウム、マグネシウム、チタン

・ベースメタル
銅、鉛、亜鉛

・レアメタル
ニッケル、クロム、タングステン

・貴金属
金、銀、白金

非鉄金属も鉄と同様、純粋な素材で使われることは多くありません。工業的に使用されるものは、他の金属との合金が主です。鉄と炭素の合金が鋼と呼ばれたり、鋼の一部がステンレスと呼ばれているように、非鉄金属合金の一部は、真鍮やジュラルミンといった固有の名称がつけられています。

これらの非鉄金属のうち、主に金属加工の材料として利用される材料はアルミ、銅、黄銅、チタンの合金になります。以下、それらの材料について紹介します。

 

◆アルミ

名称 材料記号 用途 特徴 引張強度(MPa)※目安 比重
Al-Mg系合金 A5052、A5056 一般機械部品、飲料缶 一般的に最もよく使われるアルミ材 260 2.69
Al-Mg-Si系合金 A6061、A6063 建築材料、自動車部品 耐食性が高く、構造用材に使われる 310 2.7
Al-Cu系合金 A2017 航空機材料 強度が高い。ジュラルミンとよばれる 355 2.79
Al-Zn-Mg系合金 A7072、A7075 航空機材料 アルミ合金系では最強の強度を持つ。超超ジュラルミンと呼ばれる 573 2.8
工業用純アルミニウム A1080、A1100 送配電用電線、電気器具 強度が低め 55 2.7

 

◆銅系材料

名称 材料記号 用途 特徴 引張強度(MPa)※目安 比重
純銅 C1020、C1100 電線、電気機器、放熱板 一般的に最もよく使われる銅材 205 8.94
黄銅 C2600、C2720 配線器具、計装板 加工性がよく、絞り加工に向く 295 8.47
快削黄銅 C3604 加工部品 銅と鉛と亜鉛の合金。真鍮とよばれる 335 8.5

 

◆チタン

名称 材料記号 用途 特徴 引張強度(MPa)※目安 比重
チタン TP340 医療機器、航空機 最も一般的なチタン材料 340 7.51

 

非鉄金属も鉄鋼材料と同じようにさまざまな形状で提供されますが、A5056は丸棒、A5052は板材というように、材料によって供給形状が限られるものもあります。そのため、特にアルミ材料においてはA5056は丸棒を意味し、A5052は板材を意味するように誤解を受けるケースもありますが、材料の記号はあくまでも材料の化学成分や性質に由来するものですので、形状を指定しているものではありません。そのため、仮にJISに材料特性の記載があったとしても、指定した形状が流通しているとは限りませんので注意が必要になります。

 

JISにおける材料の表記は下記のようになります。

https://www.materialhouse.co.jp/arekore/jistokusyu/ より引用

軽量化のための材料選定

軽量化を考える際、最初に気になるのは強度の問題です。金属材料の傾向として、強い素材は重く、弱い素材は軽いためです。そのため、必要になる強度によって鉄鋼材料を選ぶか、非鉄金属材料を選ぶかが最初の大きな分かれ目になります。

鉄鋼材料を選んだ場合には、鉄鋼材料の比重はおおよそ7.8から7.9前後と、材料による差はあまりありません。そのため、材料で軽量化するよりは、肉抜きなどによる構造面での軽量化を考える必要があります。もしも材料を変えて軽量化を考えるのであれば、思い切って非鉄金属や樹脂材料の中から密度(比重)の小さい材料を選ぶ方法も有効です。

その場合、鉄鋼材料に比べ非鉄金属や樹脂材料は強度が下がりますので、リブや立壁の追加など、構造面の設計変更が必要になります。

最初から非鉄金属の材料を選定した場合には、材料によって腐食のしやすさや導電性などが大きく異なることに注意してください。非鉄金属材料を選定した上で更に軽量化を図るには肉抜きなど構造面での軽量化や、樹脂材料への転換も視野に入れるといいでしょう。

コストを考慮した材料選定

材料選定でコストを下げる一番シンプルな方法は、一般に流通している材料を使用することです。
特別な材料や流通量の少ない材料は納期に時間がかかったり、価格そのものが高くなる傾向があります。

ただし、流通量によるコスト削減の効果は非常に大きいため、一般的には非鉄金属材料よりは鉄鋼材料のほうが安価で手に入れることができます。同じ系統の材料で比較した場合は、硬度が低い、粘度が小さい材料(強度が弱い材料)の方が加工コストが下がります。

安い材料を使っても加工に時間や工数がかかってしまってはコストダウンになりません。実際に、少し高価な材料を使用しても、加工のコストが大きく下がって、全体のコストが下がるケースも少なくありません。

コスト削減を考える際には、形状や加工方法、使用環境、必要とする強度、入手性など、多くの要因を併せたうえで材料を選定する必要があります。

まとめ

金属材料は樹脂材料やセラミック材料などと異なり、似たような特性を持つ材料が豊富にあるわけではありません。要求される強度や特性、形状などによって、ある程度は絞られてしまうケースがほとんどです。とはいえ、その中にも複数の選択肢は存在し、材料を選定するためには、強度や特性、加工など非常に多くの要因を同時に検討していかなければならないのも事実です。

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