加工限界について解説!板金加工:曲げ加工・穴あけ加工編

その他金属加工の基礎

2021/04/27

板金加工には、安定した品質で加工できる加工限界があります。加工限界について理解していれば、メーカーとの交渉がスムーズに進むとともに、適正な品質とコストで製作してもらえるようになるでしょう。今回は、板金加工でどのような加工限界があるのかについて紹介します。

曲げ加工の限界


曲げ加工では、材料の板厚を始めとするさまざまな要素によって加工限界が生じています。ここでは、次の5つの内容について、加工限界が発生する理由や具体的な数値などをご紹介します。

  • 曲げ高さの加工限界
  • 段曲げ高さの加工限界
  • 曲げ角度公差の加工限界
  • 曲げ部と穴加工の加工限界
  • 曲げ部に発生するキズ

曲げ高さの加工限界

板金加工において、加工限界に大きく影響する要素は、材料の板厚(t)です。

板金加工では、一般的にV字型の金型を使用してパンチ(上型)をダイ(下型)に押し込み、材料を挟み込むことで曲げ加工を行います。このときに、パンチとダイのV字の溝幅が広すぎると曲げが安定せず、品質がばらつく可能性が高くなります。また、反対にV字幅が狭すぎると、うまく曲がらなかったり、材料に深いキズがついてしまったりする可能性が高くなります。安定して曲げ加工を行うためのパンチとダイのV字幅は板厚の5倍から12倍程度が適正だとされており、加工者は製品仕様や材質を考慮してどのV字幅の金型を使うかを決定しています。

曲げ高さ(上図a寸法)の限界を考える上で重要なのは、金型のV字幅が狭いときです。曲げ加工ではパンチとダイで材料を挟む必要があるため、材料はV字幅の全体にかかっていなければなりません。V字幅を、上述した適正値の最小である板厚の5倍に設定した場合、次の計算式で曲げ高さの限界を推測できます。

 

5t(板厚の5倍) × 1/2(V字幅の半分) + 補正値(品質確保のための余裕分)

 

最小のV字幅や補正値の設定はメーカーによって異なりますが、曲げ高さの限界は板厚の3倍程度が目安だと考えておくとよいでしょう。

もし加工限界よりも曲げ高さを低くしたい場合は、複数回に分けて曲げる方法や、無理なく曲げられる高さで曲げた後にカットする方法があります。いずれにしても、コストアップする可能性が高いため、注意が必要です。

段曲げ高さの加工限界

段曲げ高さ(上図a寸法)は、上述した曲げ高さの限界に加えて、金型の干渉を考慮する必要があります。段曲げをV字型の金型を使って加工する場合は、2回に分けて加工を行うのが一般的です。しかし、曲げ高さが低いと、2回目の曲げ加工を行うときに先に曲げた部分が金型に干渉する場合があるため、単純な曲げ加工よりも加工限界が厳しくなります。

段曲げ高さの限界値の目安は、板厚の3倍程度でかつ、最低でも5mm以上と考えておくとよいでしょう。

V字型の金型ではなく、専用の段曲げ用金型を製作して一度にまとめて曲げることで、加工限界より低い段曲げ高さを実現できる場合があります。イニシャルコストはかかってしまいますが、製品仕様として必要な場合の選択肢に含めることができます。

曲げ角度公差の加工限界

曲げ加工では、曲げた部分の角度が加工後に少し開くスプリングバックと呼ばれる現象が発生します。あらかじめ角度を少し狭くして曲げ加工を行い、スプリングバックで角度が開いても寸法公差に収まるようにするのが一般的な対策ですが、曲げ角度公差(上図a寸法)が厳しいと加工自体ができなくなる可能性があるため、注意が必要です。

嵌合部にあたるなど、曲げ角度公差を厳しくせざるを得ない場合は仕方ありませんが、それ以外の場合はJIS B 0405の規定に沿って、最低でも±1°の曲げ角度公差を設定するようにしましょう。

曲げ部と穴加工の加工限界

曲げ加工を行うと、曲げ部の外側は引っ張られて伸び、内側は縮んで圧縮されます。その影響で、上図のように曲げ部の近くにある穴が引っ張られて変形してしまうため、ある程度距離を離しておかなければなりません。

目安としては、曲げの根本から穴の端部までの距離(上図a寸法)は、最低でも板厚の2倍程度離しておく必要があります。しかし、限界値付近で穴をあけると変形する可能性があるため、穴の寸法公差が厳しい場合は、板厚の3倍以上の距離を確保しておくとより安全です。また、穴が通し穴でなくタップ穴の場合は、板厚の3倍の距離が加工限界となります。

曲げ部と穴の距離を離せない場合の対策としては、曲げた後に穴をあける方法があります。しかし、この方法は作業内容が増えてコストアップするため、避けたほうがよいでしょう。別の方法としては、曲げ部に角穴を設けるというのがあり、こちらを選択するのが一般的です。

曲げ部の角穴が材料の伸び縮みを吸収する逃し穴として機能することで、穴の変形がなくなります。逃し穴として十分な機能を発揮するために、角穴の幅(上図b寸法)は穴の直径+板厚の2倍以上、長さ(上図c寸法)は板厚の1.5倍以上確保するようにします。ただし、角穴をあけると曲げ部の強度が下がってしまうため、強度的に問題がないかをあらかじめ検討しておく必要があります。

曲げ部に発生するキズ

曲げ加工を行うと、V字型のダイに材料を押し込む際に上図のようなキズが発生します。キズの位置はダイのV字幅によって変わりますが、深さは板厚の1/10程度になるのが一般的です。

このキズは加工方法に起因するもののため、発生しないようにすることは困難です。しかし、油を塗ってすべりをよくする、ダイのRを大きくする、保護ビニール付きの材料で加工する、といった方法でキズを軽減することができます。ウイングベンドと呼ばれる特殊な金型を使うことで発生しないようにすることもできます。

穴あけ加工の限界

曲げ加工と同様に、穴あけ加工についても加工限界があります。ここでは、次の3つの内容について、加工限界が発生する理由や具体的な数値などをご紹介します。

  • 穴形状の加工限界
  • 端面から穴までの距離、穴同士の距離の加工限界
  • 曲げ部に近い切り欠きの加工限界

穴形状の加工限界

穴あけ加工の限界にも、材料の板厚(t)が深く関わっています。

板金加工では、タレパンと呼ばれるタレットパンチプレス機を用いて抜き加工を行うのが一般的です。タレパンでは丸型や角型のパンチで材料をせん断しますが、材料の板厚に対してパンチの径・幅が小さくなると、パンチが破損しやすくなります。

丸穴(上図a寸法)の場合は、一般的に板厚の1.5倍以上5倍以上5倍以上、または0.5mmが加工できる最小径とされています。ただし、実際には板厚と同寸や、板厚より細い径で加工されている場合もあるので、上記は目安としてください。角穴(上図b寸法)の場合の最小幅は、丸穴の最小径よりも大きくなる傾向にあります。

また、角穴はコーナーR(上図c寸法)にも制限があります。角穴のコーナーRをなくすためにはRのないパンチで抜き加工をする必要がありますが、破損する危険性が高いため、ある程度のRが付いてしまいます。最小コーナーRの目安は、0.5程度だと考えておきましょう。

ここで紹介した加工限界は、抜き加工の場合の数値です。抜き加工に比べると加工時間が長くなるためコストアップする傾向にありますが、レーザー加工であればより小さい穴やコーナーRで加工できる可能性があります。

端面から穴までの距離、穴同士の距離の加工限界

穴あけ加工では、端面から穴までの距離と、穴同士の距離にも加工限界があります。

抜き加工を行うと、上下の加工力に対して直角方向に側方力と呼ばれる力が発生しますが、それによって材料が押され、近くにある端面や穴を変形させることがあります。変形しないためには、抜き加工の影響を受けないように距離を離しておく必要がありますが、板厚の2倍か、最小でも1mm以上は離しておかなければなりません。また、板厚が厚くなるほど、変形の度合いは大きくなります。

もし十分な距離を確保できない場合は、変形を許容しなければなりません。基本的には先に空けた穴の方が変形することになるため、精度が必要な穴を後からあけるようにするなどして、変形の影響を最小限にする工夫が求められます。

曲げ部に近い切り欠きの加工限界

曲げ部の近くに切り欠きがある場合、上図のa寸法とb寸法でそれぞれ加工限界があります。

a寸法については、曲げ部に近すぎると引っ張られて変形する恐れがあります。また、切り欠き部分が金型のV字幅にかからず、曲げ線がずれて変形する可能性もあるため、なるべく離しておくのが無難です。目安としては、板厚の4倍以上が安定して曲げられる数値となります。

b寸法については、曲げ部から離れすぎると金型のV字幅にかからなくなり、a寸法と同様に変形する可能性があります。目安としては、おおむね板厚と同等以下の数値にしておきましょう。

まとめ

この記事では、板金加工における曲げと穴あけの加工限界についてご紹介しました。加工限界は製品の形状や材質によって変わってきますので、あくまで目安として活用してください。また、加工限界はすべて覚えておかなければならないわけではありません。ファクトリーエージェントに登録しているパートナー企業はモノづくりに熟知したメーカーが多いので、図面を見た際に懸念点があれば教えてくれます。場合によっては、形状や寸法の変更が必要になる場合があるため、ご理解ください。

また、他社では加工限界だからと断られてしまった形状でも、費用をかければ実現できる場合があるかもしれません。まずは一度、こちらからお気軽にお問合せください。

 

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